一番の収穫は「仕事っておもしろいものなんだ」と知ったこと
以前から、林さんのブログのファンでした。ゆっくりお話ししてみたいと思いつつ勇気が出なかったのですが、読者の方から「ぜひ林さんを」とリクエストいただいたので、思い切って会ってきました!
休日の午後、林さんのお勤め先の会議室をお借りして、インタビュースタートです!
「トレーニングディレクター」の仕事に就かれるまでの、学校を卒業してからの経緯を聞かせていただけますか?
最初から今の仕事を目指していたわけではないんです。
新卒のときは、とりあえず就活をしようと100社くらいに片っ端から履歴書を送ったんですが、ことごとく落ち(笑)、ようやく採用してくれた会社にあまり深く考えず就職しました。
その会社ではどんなお仕事を?
貸衣装屋の接客業です。
入社前からあきらかにズレてる気がしたんですが、やらずして合わないと決めつけるのも良くないと思って入社しました。
……が、出社初日に「やはりこれは違う」と(笑)
4/1に入社して、4/2には『B-ing』(編集注:転職情報誌)を手に取ってましたね。働きながら就職活動して、その年の夏にデジタルハリウッド株式会社に転職しました。
100社も受けてせっかく入社できたのに、初日から「違う」って……目の前が真っ暗になりませんでしたか?
うーん、どんな感情だったか明確には覚えてないけど、当時は自分の状況をメタ的に評価するほどの視点を持ってなかった気がします。だからすごく悲観的になったりはしなかったと思う。
この年になって振り返ってみると、当時の自分は社会の中での自分の位置とか、ぜんぜん見えてなかったなと思います。
「ここは違う」という直感だけはあったけど、ならどこなら良いのかは分かっていなかったですしね。
デジハリはどんな縁で?
求人情報で見つけて応募したんです。
面接に行ったら、人事の人が「あなたはこの部署がいいかもね」と、のちの上司となる人を紹介してくれました。「よう」といった雰囲気でふらっとあらわれたその方と、不思議と意気投合しました。
入社が決まって、その方が所属している人材開発の部署に配置されました。
学生に就職先を紹介したり、就職ガイダンスやカウンセリングを行う部署です。ここで実際に働いていく中で、人材育成の仕事にすごくやりがいを感じる自分を自覚していきました。
面接担当の方、すごいですね。瞬時に林さんの適性を見抜いた、ということでしょうか?
いま思い返しても、なんで紹介してくれたのか分からないですね。 私自身は教育に興味があって応募したわけでもないですし。その上司とウマが合いそうだと思われたのかもしれません(笑)
仕事に就く前から、やりたいことが明確にある人は少ないと思うんです。
実際に体験してみて、「あ、これ合うわ!」と思ったものを突き詰めていくと“天職”になるってことも、ある気がしますね。私にとっては人材育成がそれでした。
デジハリは、まだ設立から間もない時期ですよね。
そうですね。そのおかげで、いろんな体験をさせてもらいました。
私はまだ20歳だったので、まわりはみんなお兄さんお姉さんだったんですが、みんなエネルギッシュで楽しさに満ちていました。
デジハリで働いた4年間の一番の収穫は「仕事っておもしろいものなんだ」と知ったことです。
そうそう、それに関連してちょっと思い出したことがあります。
26、7歳の頃、次の会社に入社するまで1ヶ月ほど休暇があったので、ひとりでドイツに住む友人に会いに行ったときのことです。
私のドジのせいで行きの飛行機を遅らせてしまって(笑)、恐縮しながら席に着いたら、となりの20歳くらいの学生の男の子が「あなた飛行機を遅らせましたね」と話しかけてきたんです。
それがきっかけで、トランジットの韓国に着くまで2時間くらいおしゃべりしました。自然と、仕事の話をたくさんしていたと思います。
そしたら、別れ際に彼から「仕事が楽しいという大人に初めて会いました」と言われたんです。
そういえば社会に出る前の自分も、「仕事」に対して「楽しい」というイメージをもっていなかったことを思い出して、ハッとしました。 サラリーマンのする仕事を、ステレオタイプに「つまらないけど、我慢してやって、アフターファイブを楽しむ」くらいにしか見てなかったかもしれません。
「仕事は楽しい」かあ。やりたいことが山積み、みたいな感じですか?
いえいえ、そういう感じでもないんですよ。
私はものすごい“受託型人間”(笑)で、自分の中には「これをしたい!」みたいな具体的なことが無いんです。目の前の相手が「何かしたい、でもできなくて困ってる」という状況に触れたときに初めて発火します。
今は、インターネットの業界を中心に、社員研修のインストラクショナルデザインを仕事にしています。
クライアントから、前もって「○時間でこういうテーマの研修をやりたい」とお話しいただくこともあるけど、その場合は一歩手前に話を引き戻して問題を整理します。
どんな仕事をしている、どんなバックグラウンドの人たちが相手なのか。
その人たちがどうなることを求めているのか。
現状とゴールのギャップを明らかにして、必要なカリキュラムや講師を手配し、学習環境を形作っていきます。自分は講師として何か提供できるわけではないけど、そういう周辺で役目を果たして、クライアントから「どこが問題点だったのか腑に落ちました」と言ってもらえると、やって良かったなと嬉しくなります。
あと、私自身は強い生命力って無いんですが(笑)、生命力の強い人に囲まれて仕事するのは楽しいし、そういう人がもっと生き生きできるようサポートさせてもらえる仕事に喜びを感じます。
インターネット系って、生命力が強くて変わった人、多いじゃないですか。インターネットの根底にある思想を熱く語る人とかに会うと、「くぅっ、キタ!」って、ひそかに萌えてます(笑)
インタビュー/編集 千貫りこ
Photography by Yusuke Mitome