だから、良いコンビなんだと思います
「PicTack」以降のアプリ制作について聞かせてください。
「PicTack」の次につくったのは、「Fresh Pantry」と「Desk Clock Calendar」です。
このふたつは、あーさんが最初にプロトタイプをつくってくれて、そのあと私がデザインを入れて……という感じでトントンっと短期間でつくりました。
アプリを作るときの役割分担はあるんですか?
今のフラスクは、エンジニアのあーさんとデザイナーの私のふたり体制ですが、リーダーはアプリごとに交代しています。
別にそういう決まりにしてるわけじゃないんだけど、一度リーダーを担当すると疲れ果てちゃうので(笑)、結果的に交代制になるんですね。
「Fresh Pantry」と「Desk Clock Calendar」の次の「PopWeight」は、一応私主導でつくったことになってます。
「PopWeight」をつくろうと思ったきっかけは?
あるとき「ダイエットをしよう」と思い立って体重記録系のアプリをいろいろ見たんだけど、既存アプリのUIの遷移がどうしても好きになれなかったんです。
最初に電卓っぽい入力画面が出てくるものが多いんですが、体重記録系のアプリを起動する目的って「今日の体重を記録したい」だけじゃなく、「これまでの体重推移のグラフを見たい」ってこともよくあると思うんですよ。
たしかに、モチベーション維持のために経過を見たいときはありますね。
「すぐにグラフを見たい、でも入力もしたい」と悶々としていたときに、「それなら、グラフをそのまま動かせるようにしようよ!」と思いついたのはあーさんです。
発想の転換ですよね。
グラフそのものを指で動かせるのは画期的ですね! でも、イザつくるとなると難しそう。
そうそう! そうなんです。
たとえば体重の目盛りを小さくきざみすぎると、指で調整しづらくなっちゃうんですよね。なので、実際につくってみて本当に使いやすくできるのか確かめてみよう、と。
そういう難しさもあって、「PopWeight」の制作には半年くらいかかってしまいました。
当時はWebサイトの受託制作をメインで行っていたので、その仕事をやりつつ、空いた時間に「PopWeight」の開発を進めてましたね。
「PopWeight」の次にリリースしたのは「Timelet」ですね。
Timeletは完全に私主導でつくったアプリです。
iOS7でデザインが変わったじゃないですか。それを見たらどうしても「iOS7用のアプリを作りたい!」という欲求を抑えられなくなって(笑)
勉強のために、自分ひとりでチマチマとプロジェクトをつくりました。で、見た目ができた段階であーさんに入ってもらって、2〜3週間で完成させました。
「Timelet」はいわゆる時差時計で、もちろん似たような既存アプリはありました。ただ、当時は「ドラム」と呼ばれるUIで時間を選ぶタイプのものしか無かったんですね。
私、このドラムが大嫌いで(笑)
ドラムって、操作が面倒でしょう? ほしいのは「こちらの〇〇時はあちらの△△時」という単純な情報だけなんだから、できるだけ簡単な操作で表示したいと思ってつくりました。
こうして見てくると、なかなか早いペースでリリースしてるんですね。
いやいや、そんなことはないと思います。
といってもアプリ制作業務がメインになったのは2013年からなので、それまでのペースが遅いのは仕方ないかな。
でも今後はもっとペースを上げて、年に3つくらいはリリースしたいと思ってます。
年3つも! 企画はあるんですか?
やりたいことはいっぱいあるんです!
iPhoneアプリもだけど、もうすぐApple Watchが出るじゃないですか。第一弾のApple Watchはあくまで“iPhoneのコンパニオン”という位置づけになると思いますが、既存アプリをちょっと便利に使えるようになる、何か小さなものを作ってみたい。
私たちがつくるのは、基本的に自分が「欲しい」と思うものだけです。
自分のために開発したアプリなので、リリース後も自然と使い続けることになりますよね。だから、アップデート作業も苦労なく続けられるのが強み。
ただ売るのがヘタなので、手間をかけてる割にもうからないんだなあ(笑)
お話を聞いていて「私たち」という言葉がさらっと出てくるのがステキだなと思うんですが、女性ふたりだと人間関係が難しくないですか?
ぜんぜん難しくないですよー。
感情的なぶつかりや、言い争いも無いし。
あ、もちろん議論はありますよ。ふたりとも仕事に関してはだいぶ頑固だと思います。
私が暴走して「あれやりたい、これもやりたい」と言ってあーさんに却下されることはよくあるんですが(笑)、その瞬間はもちろん凹みますよ。けど、ひと晩たったらあーさんが言ってたことが正しいと分かるので。信頼してますね。
彼女には、常に本質的なものが見えているんです。逆に私は……なんでしょうね。楽観的なところぐらいしか取り柄がない気が(笑)。
でも価値観が似てるんです。だから、良いコンビなんだと思います。
インタビュー/編集 千貫りこ
Photography by Akiko ARAI