「デートする暇がない」って言いたいなあ(笑)
前回はお芝居に対する想いを語っていただきましたが、同じ「芝居」でも、テレビドラマと舞台ではどちらに興味がありますか?
今は舞台の方が観るのも立つのも好きですね。プライベートでも、チャンスがあればできるだけ舞台を観に行くようにしています。
舞台を観に行くときって、どうしても心のどこかに「勉強のため」という気持ちがあるんですが、観ているうちにそんなことを忘れてしまうお芝居に出会えると幸せな気分になります。
もちろん、ドラマや映画のオーディションも受けてます。テレビに出ると家族や友達やみんなが喜んでくれますから(笑)
私は舞台に立ってお芝居した経験が無いのですが、やはり舞台に立つとスイッチが入るものですか?
うん、入ると思います。
なるべく自然体でいようと思っているけど、舞台の上で光をあびると“何か”が出てきちゃう気がしますね。
私、もともと地味な人間なんです。だから芝居をしているときや歌っているときは、自分の中に眠っている正反対の顔を見せたくなるのかもしれません。
演じることで、“地味”というコンプレックスを昇華している。自分をなぐさめてるのかも(笑)
お芝居の中では、素の自分だったらあり得ないような恋もできますね!
そうそう!
でも、彼氏でもない人と毎日一緒にいてキスしたりするのは、やっぱり異常なことだと思いますよ。
芝居をきっかけに相手役の人のことを好きになって、付き合ったり結婚したりといった芸能ニュースを目にすることもありますが、それは仕方ないことだと思う。芝居の稽古中は、自分の汚いところも良いところも、短期間で全部見せちゃうんですもんね。
ちなみにリアルな恋愛の方はどうなんですか?
今は「彼氏いらないから仕事ください」というのが本音です。
もっと仕事したい! 「デートする暇がない」って言いたいなあ(笑)
今のところは将来のこともあんまり考えてないです。結婚とか、現実味が無いですね。
とはいえ、友人たちは結婚したり出産したりしているので少し焦ってます(笑)
悩めるお年頃ですね。
ところで、舞台に立つのってエネルギーが要りませんか? 私自身は、セミナーなどで人前に出て注目された後にどっと疲れを感じるんですが。
エネルギー、要りますね。
普段の生活よりも意識しなきゃいけないところがたくさんあるので、とても大変です。
舞台に立つってことは、見られる快感も大きいんだけど、それと同時に比較されたり批判される覚悟も必要なんですよね。
私、こまかいことを割と気にするタイプなんです。ほめられると調子に乗ってがんばれるけど、けなされたらガックリ落ち込んじゃう(笑)
この仕事を続けるには、体力だけでなくメンタル的なタフさを持っていないといけないな、と思います。
さて、ではここで関谷さんが出演するミュージカル『メリリー ウィー・ロール・アロング』の話を聞かせてください。関谷さんはオーディションで出演が決まったんですよね。
『メリリー ウィー・ロール・アロング』の最初のオーディションは1年以上前でした。昨年の夏ですね。
一般公募の大々的なオーディションだったんですが、なかなか決まらなくて何度も呼ばれました。はじめのうちは、正直言ってあまり期待してなかったです。でも何度か呼ばれているうちに「受かりたい」と欲が出てきました。
演出の宮本亜門さんは「君たちが緊張しているところは見たくない」と言って、オーディションでも柔らかいにこやかな雰囲気を作ってくださって、ありがたかったです。
それでも緊張してしまったし、100%の力が出せたかどうかは分からないんですけど……運良く受かりました。
このミュージカルで演奏される曲はスティーヴン・ソンドハイムというアメリカの巨匠音楽家が作詞作曲しているんですが、彼の作品は特殊なんです。
難曲ぞろいでたやすく太刀打ちできないんだけど、それが音楽として成立したときに浮かび上がってくるものがとてつもなく大きい!
なんというか、魔法使いみたいな人です。
長い間、彼の作品に出てみたいと思ってました。
そして、スティーヴン・ソンドハイムの作品は、日本で上演されるときにはかならず宮本亜門さんが演出するんです。亜門さんが演出する舞台に立ちたいという気持ちも持っていたので、出演が決まって今はとてもハッピーです。
インタビューさせていただいている現在(9月半ば)、すでにお稽古が始まっているそうですが。
はい。歌の稽古が始まっています。ミュージカルの場合、お芝居の前にまず歌とダンスを作っていくんです。
今は“カンパニーの声”を作っているところ。役者個人ではなく、全員で出す声がどんなものか突き詰めている段階です。ひとりひとりの力量ではなく、全員の意識が高まることで初めて成立するラインを探る作業。おもしろいですよ。
それにしてもソンドハイムの歌は本当に難しくって、現時点では、本番で楽譜を見ないで歌うなんて考えられないです(笑)
でも難しい分、心にひっかかるところがたくさんありますよ。メロディアスな部分もあって、一度聴いたら忘れられないと思う。
私、ミュージカルって、終演後に1曲でも2曲でも心に残っている曲があるかどうかで作品の印象が変わると思ってるんです。そういう意味で、期待に応えられる作品になると思ってます。
かならず良いものになると思うので、是非お越しください!
Rico’s Eye
2度ほどお目にかかったことはあるものの、じっくりお話を聞かせていただきたくてダメ元でお願いしたインタビュー。稽古の合間の貴重な休日だというのに、こころよく引き受けてくださいました。
黒目がちな瞳をキラキラさせながら、ときに「りこさんはどう思いますか?」と逆質問を織り交ぜつつ、誠実に語ってくれた春子さん。そのキュートでスマートな魅力にすっかりやられ、大ファンになりました。これからも応援させていただきます!
インタビュー/編集 千貫りこ
Photography by Akiko Yanagawa