大学在籍中にデビュー。これが間違いでしたね(笑)
「僕は顔出しNGなので、代わりにこれを撮ってください」と言いながら、たくさんの作品を抱えてインタビュー会場にあらわれた若狭さん。バッグの中からはなんと、私をイメージしてつくってくださったキューピー人形も登場!
うれしくて涙目になりながらインタビュースタートです。
デビューされてどのくらいになるんですか?
どの時点を“デビュー”とするかによって変わりますが、雑誌の新人賞で初めて賞をいただいたのが19歳のときなので、そこから数えると20年です。
賞に応募されたきっかけは? やはりプロになるため?
マンガは子どものころから好きだったので、あまり深く考えずに応募しました。
でもアシスタントの経験があるわけじゃないし、描き方とかもぜんぜん知らなかったので、まずは画材屋さんに行くところから始めました。
応募した作品は、鳥山明先生の『ヘタッピマンガ研究所』っていう入門書的なやつを読みながら、見よう見まねで描きました。
で、応募した作品が奨励賞(編集注:小学館第30回スピリッツ賞 奨励賞)に引っかかって担当さんがついて……。そこから段階をふんで言われるがままにマンガ家になった感じです。学生で十分に時間もあったので、大学在籍中にデビューできました。これが間違いでしたね(笑)
えっ、間違い?(笑)
デビューしたものの、大学を卒業した途端に連載が終わってしまったんですよ。どうしようかと思いました。しばらくは他の先生のアシスタントをやらせていただいたりして食いつなぎました。
それにしても、生まれて初めて描いた作品で賞をもらうなんてすごいですね。
僕自身、応募した時点ではまさかマンガ家になれるとは思ってなかったです。それ以前に賞をいただけるとも思わなかったし。もし最初の投稿で賞をもらってなかったら、「やっぱりそんな甘くないよな」と一発であきらめて普通に就職してたと思います。
……あれ? なんか僕、ヤな人っぽくなってませんか?
自慢じゃないんですよ。なんと言えばいいのかなあ、うーん……。
でも簡単にデビューできた分、いまになって苦労してるかもしれません。
プロになってから下積んでます(笑)
マンガ家は厳しい職業だと聞きます。やめていく方も多いそうですが。
僕も、やめてはいないものの、キャリア20年のうち実質半分くらいしか活動してないんですよ(笑)
連載が長く続くことがなかなか無いので、結果的には“2年連載して1年休む”みたいなサイクルになってしまってます。
連載が終わったら、とりあえず「わーい休みだー」って数ヶ月遊んで、貯金が少なくなってきたら担当の編集者さんに連絡してネーム(※編集注:あらすじのようなもの)を見てもらって次の連載に備える……という感じですね。
マイペースで活動されてるんですね。ちょっとうらやましい。
生活はギリギリなんですけどね(笑)
連載が何年も続けられればそれがベストなんだけど、終わってしまったものは仕方ないので、空いた時間をそれなりに楽しむようにしています。
一番長く連載が続いたのは、どの作品なんですか?
『働け!メモリちゃん』ですね。
読み切りから始まって連載になり、2年くらい経ったころに一旦中断したんですが、その後また連載を再開してもう1年……合計で4年くらい関わったので、「メモリちゃん」が一番長いと思います。
私、若狭さんの作品の中で「メモリちゃん」が一番好きです! 連載は終わっているのに、なんで単行本が最終巻まで出ないんですか?
あはは、ありがとうございます。なかなか思うようにいかないんですよねえ。
マンガ家って、一度ドカンと当たって名前が売れればどんどん仕事が舞い込んでくるんだろうけど、そうでないと確かに厳しい職業です。
でも『どんまい!』はドラマ化されてますよね。若狭さんは十分売れっ子だと思うのですが……。
『どんまい!』はNHKで制作されたので、あんまりTVで漫画の宣伝をしてもらえなかったんですよ。ドラマ化がきっかけになって単行本の新装版が出たのは嬉しかったけど、僕自身には大きな変化は無かったですね。
民放だったらちょっとは違ったかなあ(笑)
主演の相武紗季さんに会えなかったのも悔やまれます!
むむ、たしかにそれは悔しい! ところで、ふだんの生活はどんな感じなのでしょうか?
今は『月刊サンデーGX』で『西向きマイルーム』という作品を連載中なので、基本的には自宅でひとり黙々と作業してます。締切り日になると担当編集者さんが近所まで来てくれるので、ファミレスで原稿を手渡します。
で、眠い目をこすりながら次回の打ち合わせをして(笑)
ちなみに、『月刊サンデーGX』の作家陣の中で、原稿を紙で渡してるのは僕だけじゃないかなあ。最近は、みなさんデジタルデータで入稿するんですよ。
僕はなんとなくデジタル化の波に乗り遅れてしまったので、もうこうなったら「あえてアナログにしてるんですよ」って顔をしていようと思ってます(笑)
インタビュー/編集 千貫りこ
Photography by Ayumi Ohyama