英語って、常に「神」の目線が存在するんです
ヤスヒサさんはとにかく「情報が早い」印象です。スマートフォンのアプリも、新しいものをよくご存知ですよね。
アプリはさんざん買ってますから。これまでアプリに使った合計金額? 考えたくない(笑)
海外のブログなどで紹介されているアプリで、良さそうだと思ったら躊躇なく買いますね。
でも、実は最近は買い控えてるんです。大量にアプリを買っても置き場所が無くて。ホーム画面が、あっという間にフォルダーだらけになってしまうでしょ?
あるある!
これって、スケーリングできない現在のUIの限界ですよね。
アプリをつくってるベンダーは、アプリを立ち上げたあとのことだけ考えてちゃダメかも。アプリのインストール自体が頭打ちになったら、いくら良いものをつくっても使ってもらえないんだから。
えっ、でもそれはOS側の問題だから、アプリベンダーにはいかんともしがたいですよね。
それはたしかにそうだけど、提案することは可能ですよね。自分のブログとかで。
「提案してもムダ」なんて言わずに、ひとまず考えてみるのもいいと思うんですよ。
ツールについての文句とか、「使い方を教えてほしい」という声はよく聞くけど、建設的な提案や自分なりの解を発表する人は少ない。「自分だったらこうする」とか「自分なりに使い方を調べてみたよ」と発信することで、仕事のチャンスにつながることもある気がします。
なるほど、情報発信を大切にしているヤスヒサさんらしいお話ですね。
情報発信といえば、ヤスヒサさんはブログだけじゃなく、ポッドキャストによる音声コンテンツの発信にも積極的に取り組んでらっしゃいますね。
ポッドキャストはあんまり真剣に宣伝してないので、ちゃんとやらなきゃと思ってます(笑)
でもやり始めると一生懸命になってしまうので、結構大変なんですよ。ポッドキャストにせよブログにせよ、無理なく続けることが大事なので、今はポッドキャストの宣伝はちょっと控えてます。
始めるのは簡単なんだけど、続けるのが難しいんですよね。このサイトも先行きが心配です……(笑)
ワークフローが決まればラクになりますよ。
たとえばポッドキャストだと、音を録って編集して公開するまでの手順はかなり煩雑です。最初のころはあれもこれもと考えながら作業していたので大変だったけど、今は作業の手順がしっかりできあがっているので苦労しないですね。
便利なツールはどんどん取り入れたいので、ワークフローが確立するまでは、試行錯誤しながらツールを選定しました。
ヤスヒサさんは英語ができるので、ツールの選択肢はかなり広そうですね。うらやましいです。
そうですね。たしかに、英語ができることはアドバンテージだと思う。高校時代からアメリカにいたのは大きいですね。
でも自分が苦労した分、英語ができなくて辛い気持ちも分かるんですよ。だからみんなに「英語を勉強しろ」と言う気はないです。どちらかというと、自分が橋渡しになりたいという気持ちがあります。
たとえば英文ブログを読むとき、コードの話などは多少英語が分からなくてもなんとかなるけど、概念的な話を読み解くのは難しいですよね。僕の話に概念的な内容が多いのは、そういった理由も少しあります。もちろん、僕というフィルターを通すので、単なる翻訳ではなくなってしまうんだけど。
そうそう、ちょっと話がそれるんだけど、英語を学んでいておもしろいことに気がついたんですよ。
英語って、常に「神」の目線が存在するんです。
神!? どういうことでしょう?
英語圏の人が自分のことを話すときって、いちいち「I」をつけますよね。これは別に自己主張が強いわけじゃなくて、彼らにとっては「(神の目で見た)世界の中にいる『私』という人」が発言する感覚なんじゃないかと。
この感覚がしみついているから、ディスカッションするときも常に客観的でいられる気がするんです。いつも外側から自分を見ているから、自分と違う意見を言う人に対しても寛容……というか、あまり感情的にならない。
日本語で自分のことを話すときは、視点が自分の内側から外に向かっている気がします。だから、他の人が自分と違うことを言うと、恐れたり腹立たしくなったりするのかも。
あと、日本語は1文字に込めることができる情報量が多いので、たくさんの情報を消化するクセがついているように思います。
だから日本のランディングページは情報が詰まった巻物みたいなんじゃないかな。今後は、スマートデバイスへの対応を考えて少しずつ変わっていくのかもしれないけど。
ランディングページというのは、バナー広告などをクリックしたときに表示される「着地専用」のWebページですね。
ランディングページは海外にもあるんですが、日本のランディングページは、紹介する商品自体の善し悪しではなく、「その商品を良いと言っている人がいる」といった切り口に重点をおいていることが多いのが興味深いです。商品説明よりも、有名人のおすすめコメントの方が大きく掲載されてたりして。日本人は、自分自身よりも、他者の評価を信用する傾向があるのかもしれませんね。
あと、サイトをつくるときに競合他社のサイトを調べて足並みを揃えようとするのも日本独特な気がします。新聞社のサイトとか、みんな似てますよね。
なるほど、国民性はたしかにあるかも。
ヤスヒサさんから見た「海のむこうのWeb業界」って、どんな感じなんでしょうか?
今は僕も離れたところから見てるだけなのでなんとも言えないけど、「みんなで盛り上げよう!」というパワーを感じますね。
そもそも母数が多いというのもあるけど、年齢やキャリアに関係なく、たくさんの人が積極的に情報発信している印象を受けます。日本では、キャリアを重ねて社会的な立場に就いた人が、あまり物を言わなくなってしまうのが残念です。立場上、言えないのは分かるんだけど。
僕はできる限り発信を続けたいもんです。でも、ジジイの昔語りにならないように気をつけないと(笑)
海外とくらべて「良くないなあ」と思うのは、情報発信してる人を裏で批判する行為ですね。
「つっこまれるのが怖いからブログを書きたくない」みたいな風潮は本当に良くないと思う。ギスギスしてて気持ち悪い。
ああ、私も怖がってる1人です。「これは叩かれそう」と思って、本当に書きたかった内容を変更しちゃうこともあります。
情報は発信した人が勝者だと思うんです。もちろん出すからにはそれなりの責任を負う必要はあるけど、ちょっとくらい間違ってもいいのに、と思う。あとで直せばいいじゃない。
僕も、公開してから「てにをは」の間違いに気づいて直すなんてことはしょっちゅうです(笑)
叩かれてもめげずに情報発信してる人が、いずれ認知されて本を出版したり、なんてこともありますよね。
Rico’s Eye
長谷川さんとは、セミナーの懇親会やポッドキャストなどで何度か対談したことがありますが、今回あらためてお話をうかがって、長谷川さんの人間的な魅力をさらに垣間見た気がします。
多感な思春期をアメリカで過ごしたことが今の長谷川さんの人格形成に多少なりとも影響していることは何となく想像していましたが、「グローバルな視点を持つ人」ならではの奢りみたいなものはまるで無く、むしろ日本で生きている私たちに対する深い愛情を原動力として今の活動がある、という印象が深く残りました。
長谷川さんのメッセージをしっかり捉えて、日本のWeb業界をより良く発展するお手伝いをしたい、と強く感じました。ヤスヒサさん、ありがとうございます!
インタビュー/編集 千貫りこ
Photography by Yoko Daikyu