こもりまさあきさん

“Taker”より“Giver”になりたいと思ってます

Web業界におけるカリスマ的存在のおひとりであるこもりさん。あいにくの雨の中、いつもどおりのひょうひょうとした雰囲気であらわれたこもりさんをお迎えしてインタビュースタートです。

いつも精力的に講演活動されている印象です。これまでに行った場所を教えてください。

大阪、仙台、金沢、福井、愛知、広島、岡山などなど……ですね。
依頼を受けるかたちで講演させてもらうこともあるし、出張先で仕事ついでに勉強会を開くこともあります。

ときにはノーギャラで勉強会を開催することもあるそうですが、何かポリシーがあるんですか?

まず前提として、「東京と地方では技術力や情報量に大きな差がある」と思いこんでる人が多いような気がするんです。
地方に行くと“地方在住であることへの引け目”みたいなものを感じることがあるんですが、実際には、これだけインターネットが普及しているんだから情報量の差なんて無いですよ。

むしろ地方にしかできないこともあるんじゃないか。それに気付いてもらえたらな、と。

凝り固まったシステムの中で、与えられた仕事をこなすことが求められる都会の制作会社より、地方の制作会社の方がもっと柔軟に仕事のやり方を追求できる可能性を持っていると思ってます。
大手の代理店などを挟まない仕事が多いぶん、自分たちのやり方次第でもっと先に進むことができる。
僕の実感としては、地方の制作者の方が先進的な手法を実践している印象です。

ちなみに、僕のセミナーには制作畑じゃない人も参加してくれてます。制作のプロですら知らないような知識を持ってる発注側の人間が少しずつ増えているんですよ。こわいでしょ?(笑)

こわいですね(笑) でもフリーランスならともかく、一部のやる気のある制作者の意見を組織に反映するのは難しくないんですか?

うん、「新しい方法を取り入れたいんだけど、社内で同意を得られない」という相談を受けることもありますよ。

特に大きな組織の中の人や、多くの人達がそれぞれの立場で参加する仕事は、大変だと思います。そういう意味でも、地方の方が比較的組織が小さいのでまだ変革を起こしやすいんじゃないかな。
東京の人たちは、うかうかしていると外堀から埋められてきているかもしれませんよ(笑)

あと、東京で突出している人たちは、日本ではなく世界に目を向けている気がします。
少なくとも僕の周りにいる若い人たちを見てると、いつ東京の外に飛び出していってもおかしくないんじゃないかな、と。実際にもう外に出始めてますしね。

もしそうなったら、東京には仕事はあるかもしれないけど中心ではなくなるかもしれない。今だって、必ずしも東京が最先端ってわけでもないし。

それにしても、ご自分の時間と労力をつかって集めた情報を惜しみなくシェアする“こもりスタイル”は、なかなかマネできません。

最近『GIVE & TAKE』という本が売れているみたいですが、僕は「クレクレ」ばっかり言ってる“Taker”より“Giver”になりたいと思ってます。

若いころからずっと“Giver”だったんですか?

いや、そういうこともないと思うんだけど……。

僕の場合は出自の問題がありまして。
僕、両親を知らないんですよ。未婚の母から生まれた子どもで、生まれてすぐに義理の父母のもとに預けられました。

“両親と血がつながっていない”という事実は18歳のときに知りましたが、そりゃ当時はショックでしたよ。かといって、今さらグレるわけにもいかないしね(笑)
でもそのとき、自分の考え方が大きく変わった気がします。

「生きてるだけでめっけもん」って明石家さんまさんみたいな言い方するのもナンだけど、生まれた瞬間からまわりの人に手をさしのべられて生きてきた、そういう意識があるんです。だから自分が受けた恩を返したいのかもしれない。

ただ、勉強会は他人のためだけじゃなくて自分のためでもあるんですよ。
僕は会社を経営するタイプではないけど、人と人をつなげたり、自分のところに入ってきた仕事を別の人に回すというか……一緒にやったりチャンスを提供するぐらいのことはできるんじゃないか、と思ってます。
でも、いざ仕事を頼もうと思ったときに「そんなやり方、知りません」と言われたら困るんだよね。

何でもすぐに理解できる人ばかりではないし、彼ら彼女らが調べたりしてる時間で仕事が終わることもある。だったら、直接会って教えた方がてっとり早い。
できない理由を並べ立てる人より、「自分だけでも変わってやろう」と思ってる人たちを相手にする方がこちらとしてもやりやすいし。

あちこちで勉強会を開くのは、そうやって自分の仕事をお願いできる人を育成する狙いもあるんです。
僕らの仕事は顔を合わせなくても進行できるので、地方在住の方にお願いしても全く問題ないですからね。

インタビュー/編集 千貫りこ

Photography by Sivacchi

Profile

こもりまさあき(こもりまさあき)

1972年生まれのフリーランス。
1990年代前半に都内のDTP系デザイン会社にてアルバイトをはじめる。大学卒業後そのまま正社員となり、入出力業務、デザイン業務、ネットワーク関連業務に並行して従事。2001年、会社を退職しそのままフリーランスの道へ。案件ごとに業務内容や立ち位置が異なるため、職能・職域的な肩書きはなし。
基礎から覚える、深く理解できる。 Webデザインの新しい教科書』(共著・MdN刊)をはじめ、執筆多数。2014年からはWeb制作者向けに必要な情報を早く届けたい、との想いから電子書籍の執筆・販売を開始。現在その第一弾となる『Sketch 3 Book for Beginner』が好評発売中。

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