関谷春子さん

ふだんは意識しないけど、こうやって言葉にすると役者の仕事って不思議ですね

子どものころから女優さんになりたかったんですか?

うーん、と。分からない(笑)
正直に言うと、なりたかったと思います。
でも周りには言えなかったですね。理由? 容姿にコンプレックスがあったのと、なんとなくミーハーっぽくて恥ずかしかったから。

その一方で「国連職員になって芸術と国際協力を結びつけるような仕事をしたい」という現実的な目標もあったんですが、大学在学中に留学したカナダのトロントで、自分の本当の夢を思い出しました。
カナダで音楽やダンスに没頭している同世代の友人ができて、その姿を見ているうちに「やっぱり私もやりたい!」と。
結局、大学を卒業した後に1年間ミュージカル俳優の養成学校に通うことになりました。

「女優になりたい」と伝えたときの、ご両親の反応はどうでしたか?

もともと「研究者になる」と言って大学に行き、留学までさせてもらっていたので「急にどうした!?」という感じだったけど、「やりたいならやってみなさい」と言ってくれました。
今も応援してくれていますよ。応援しているのになかなか芽が出なくて、不憫に思われてます(笑)

でも、今年のGWに放送されたイオンのCMは何度も目にしましたよ。ご両親も喜ばれたのでは?

あはは、そうみたいですね。ずいぶんたくさん流れていたようで。
やっぱりテレビに出ると影響が大きいですね。
特にあのCMは“元気なお母さん”のキャラクターが私のイメージに合っていたようで、友達からもいまだに「見たよ」と言われます。

CMといえば、Plan・Do・SeeさんのCMもステキですね。

ありがとうございます。あのCMは映画監督さんが撮ってるんですが、私にとって貴重な体験でした。
CM撮影の経験がたくさんあるわけじゃないので分からなかったんですが、スタッフの方に聞いたら現場の雰囲気が独特だったようです。演技も、台本があるような無いような状態で。自由にやった中でいいものを使う、という感じでした。

まるで本当の親友に見えました。とてもじゃないけどオーディションで集められた人たちとは思えない。

でも実際、あの日しか会ってない人たちなんですよー。
ふだんは意識しないけど、こうやって言葉にすると役者の仕事って不思議ですね。出会ったばかりの人と親友のふりをしたり親子のふりをしたり。
ただ、それを“本当”のように見せるのって、役者の力だけじゃないんです。あのカット、あの衣装、あの照明があってこその、あの雰囲気なんです。

たくさんのプロの力が合わさって、ようやく形になるんですね。

うん。みんながそれぞれ真剣にひとつのものに向き合っていて、ずっと青春時代を生きてる感じですね。そのせいか、スタッフのみなさんも若く見える人が多いです。
私たちの仕事って、もちろん効率化も大切なんですが、それと同時に答えが無いものを追求し続けなきゃいけない気がしています。

常に発展途上ということでしょうか。すると、たとえば過去の映像を見たときに今の自分と較べてイヤになっちゃったりすることはあるんですか?

常にその時点で自分なりのベストを出しているつもりなので、イヤにはならないです。ただ、「今ならもっと他のやり方があるかもしれない」といった気持ちにはなります。

発展途上だからこそ続けられるのかもしれませんね。「これで完成」と思ったら引退しちゃうかも。
あと“悔しさ”も、前に進むモチベーションにつながっているかな。「あの時ひどいことを言ったあいつに、いつかギャフンと言わせたい」みたいな(笑)

関谷さんは歌もお上手ですよね。当分は芝居メインとしても、いずれ歌の仕事に挑戦してみたい気持ちもあるんですか?

チャンスがあれば。「芝居じゃなきゃダメ」みたいに決めつけてはいないです。
歌は楽しい! 歌っていると自由になれるし、もっとうまくなりたい気持ちもあります。
でも基本的には芝居をやりたい。歌が好きで歌が得意だから、歌を武器にして芝居の仕事にかかわっていきたいです。

あと私の強みって、どこの劇団にもどのジャンルにも属していないことだと思うんです。これは“個性”と考えていいんじゃないかな、って。だから話をもらったら何にでもチャレンジしてみたいです。

……あ、でもこれって“受け身”な考え方なのかなあ。あんまり良くないことかもしれないですね。
本当は、「私はこういう仕事がしたいんだ!」って的を絞って、そこにめがけて突き進むべきなのかもしれないけど。仮に的を絞ったところで、実際どうやってアプローチすればいいのか、手段が分からないんです。

こういう悩みって、役者の仕事に限った話じゃないですよね。
うーん。みんなどうしてるんだろう。

独り言モードに入りましたね(笑)
ちなみに私は、関谷さんくらいの年齢(20代後半)のときには「脱サラして独立する」ことが目標でした。その夢はかないましたが、仕事内容自体はあっちに流されこっちに流されで、まだ定まっていません。

でも、そうやって流されることで初めて出会える人やコトがあるんでしょうね。
私は、今はまだフワフワ漂いながらいろんなことを経験させてもらってる時期なのかも。
中途半端な現状はコンプレックスだけど、内心「おもしろいな」と思ってます。

「将来の目標は?」みたいな質問を受けたときにちゃんと答えられないもどかしさもあるけど、やっぱり今は「楽しいことならなんでもやりたい!」というのが本音です。
とりあえず、やってみてから判断したい。そのとき「失敗」と思っても、数年後には「やってよかった」に変わるかもしれないですもんね。

インタビュー/編集 千貫りこ

Photography by Akiko Yanagawa

Profile

関谷 春子(せきや はるこ)

東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、『青猫物語』で女優デビュー。その後、流山児★事務所ミュージカル『ユーリンタウン』でヒロイン・ホープ役に抜擢され、歌と演技が高く評価された。近年は音楽ユニット「2 OUT」を結成し、ライブ活動など多方面で活躍。

ほかの主な出演作に『ジキル&ハイド』『アメリカン・ラプソディ』『桜の園』『パイレート・クィーン』など。

2013年11月には宮本亜門演出『Merrly We Roll Along~それでも僕らは前へ進む~』への出演が控えている。

公式プロフィール

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